2025年9月号「ここ数年、暑さが厳しくて種まきや苗を植えるのに苦労します。対策はありますか?」

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Q.ここ数年、暑さが厳しくて種まきや苗を植えるのに苦労します。対策はありますか?

A.昨年の9月も厳しい残暑でした。彼岸の頃、20日に名古屋で37.5℃の最高気温を記録しています。9月の最高気温の平年値が29.1℃なので、並外れた暑さでした。彼岸までに植えないと育たないと言われているキャベツや白菜などの秋冬野菜ですが、近ごろは高温と乾燥で失敗する傾向があります。ニンジンや大根などの種まきも35℃を超えると難しく、発芽適温(ニンジン15~25℃、大根15~30℃)になるのを待たずに、早く種まきすると発芽率が落ちるなど暑さに負けてしまいます。通常、植物は種まき後に水を吸って休眠から目覚め、適度な温度があって、酸素を吸って芽が出ます。この時の温度が適温ではなくなっています。

キャベツは15~30℃、白菜は20~25℃が適温で、35℃を超えると、休眠したまま芽が出なかったり芽が出る途中で止まったりします。芽が出ても、高温続きで乾燥してしまうと枯れてしまいます。播種から定植までの苗の管理は、高温と乾燥で気が抜けません。水やりを忘れないことに加えて、北側の陽の当たらない涼しい場所での管理や被覆資材の活用など対策が必要です。なお、キャベツや白菜の生育適温は20℃前後です。30℃を超える日があると、生育が停滞してしおれたりします。高温による光合成量の低下と根の活性が弱まることから育ちが悪くなるわけです。気を付けていても、植えた苗が傷んでしまうことはあります。新葉が出ず根付いていないようでしたら、植え替えましょう。残暑が厳しく、苗を植えるには早かったということです。植付けは、暑い日中を避け気温・地温が下がり、日差しも弱まる夕方にたっぷり水を植穴に入れてから植え付けます。

ニンジンや大根などの根菜は、苗を作らず直まきします。直射日光のあたる畑に種まきしますので、暑さや乾燥の影響を直接的に受けます。種まき前に雨が降れば幸いですが、乾いている場合はたっぷり水やりをしてから播種します。種まき後の水やりは、注意が必要です。均平にならした覆土が流れてしまい、種が見えたり部分的に重なった覆土によって発芽が悪くなったりします。種をまいて覆土したら、手のひらで押さえます。土と種が密着して水分を吸収しやすくなります。また、土が詰まったことによる毛細管現象で土の中の水が上がりやすくなります。そして、直射日光を遮るために、白色の寒冷紗を掛けます。支柱を立てて浮かせておけば、苗を傷めません。なお、黒色の寒冷紗など遮光してしまうネットなどは、徒長したモヤシ苗にならないよう芽が出たらすぐ外します。真夏に播種するニンジンは猛暑の中、乾燥との闘いです。発芽に光を好む種子のため、浅くまきます。地表近くは乾燥しやすく発芽が悪くなりがちです。そこで、光が当たって乾燥を防ぐ手法として溝底播種があります(図)。

図 溝底播種の例図

この図は例示で、条間は狭く、べたがけ保温してある。出典;農業技術事典(農研機構)

播種する畝の表土に、角材などの角をぎゅっと押し当てて深さ3~5㎝のVの字の溝をつけます。こうすると、地表面は乾いてもV字に鎮圧された溝底では土中から水分が上がってきます。溝は90度に開いてますので、光も届きます。溝底に種をまいたら、角材で種を満底に密着するように鎮圧します。

残暑、厳しいとの予報です。野菜だけでなく、皆様も水分を補給してください。閑話休題。旧暦の8月15日の夜は中秋の名月を楽しむ十五夜です。今年は10月6日です。これは、秋の訪れが遅い、ということでしょうか?